管 啓次郎
詩人/明治大学教授
Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。
—————— 港|30年ぐらい経って、えいやってページを開いてみたら、読んでいない部分に決定的なことが書いてあったりしてね(笑)。
[p94 2行目ー7行目]
Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。
宇宙船というと金属の外殻をもちグラスファイバーとか使っていかにも硬い感じがするけれど現実の宇宙船、しかも私たちの生活が基盤とする宇宙船は土くさく樹木と水と日向と獣の匂いがしてやわらかく成長と分解が同時に進行する巨大な場所、それは地球をまるごと名指しそこであらゆる要素を描写しようとする言葉が無数の言葉が無数の事物とからみあって存在するこの大地こそ人があらゆる動植物と共有する脳を超えた脳、物質と非物質の合同的な脳、そこに起こる潮汐、夜明けと日没、立ち起こる風、流星とオーロラ、ゆれる地面、噴出するマグマ、巨大化する波、嵐、しずけさ、極度な乾燥と大洪水、一瞬たりとも停止することのない持続的生成のその変化を物と言葉が交わすまばたきの信号によって感知し通信し連結し編み上げられていくのがこの船、私たちはそれに乗り今ここが宇宙でこれ以外に生はなく生の可能性すらないと気づいたとき初めて心が生まれたんだって。
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