100の読者、100の経験[066]


石川 あき子

 

Calo Bookshop & Cafe店主

2018年11月2日 大阪市内の自宅にて
2018年11月2日 大阪市内の自宅にて

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— ここでは言葉の宇宙船の建造、つまりは小さな出版活動に焦点を当てたけれど、わたしたちの試みは、もしかするとほかの分野でも参考になるかもしれない。それは、何でもいい。放送局、発電所、交通システム、食糧生産システム、都市。手が出ないと思っていた巨大なシステムに対し、小さくて、フットワークの良い、もう一つの別のやり方をつくり出す。

まず、ちょっとやってみることだ。そしてうまくいかなければ、引き返す。小さければ引き返せる。小さいものだけが引き返せる。こうした小さな試みが、社会の至る所で自生し、共生する世界を夢見る。そんな生き生きとした複雑な世界を求めて、わたしたちは船を出そう。

p176 9行目ー17行目]

  

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

私は、小さな本屋をやっています。

 

偶然にも本屋の仕事をしだして18年、当時すでに「出版はこのままではダメだ!」と叫ばれていました。その4年後に自分で店を始めるときには、大型書店にお勤めの方から「個人で新刊書店ができるとは思えない」と言われました。確かに当時、そう考えるのは無理もなかったと思います。けれども今や、大手書店出身の個人書店主は何人もいます。

 

小さい本屋では本だけでやっていくのもやっぱり大変なので、みなさん、コーヒーも出したり、雑貨を売ったり、あげくに本を出版したり…と工夫をこらしており、それぞれのお店の成り立ち方はそれぞれに違っています。こうすればできる、という決め打ちはできない世界です。場所や人にあったやり方を探すことで、少しずつ状況を変えてきたんですね。

 

いろんなことを自らするのは大変だし効率も悪いですが、実のところけっこう楽しいことでもあります。私たちは、複雑さを取り戻すことで生き延びているのかもしれません。



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