100の読者、100の経験[043]


李 和晋

 

写真家

2018年3月12日
2018年3月12日

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— 港|いま思い出せるのは、ある冬の夜に毛布も何もないなかで寝なきゃいけない状況にな って、寒くて寒くてしょうがない。すると、ドン・ファンが葉っぱを一枚お腹の上に置いてくれるんですよ。その途端にじわーっとその葉っぱから熱が伝わって、全身がぽかぽか してくる。そういう一節があったように思います。こうしたイメージというのは写真や映画ともまた違っていて、言葉でないと伝えられない類のものです。ブルトンもそうですが、若い頃にこうしたイメージと出会うというのは大事な経験だと思いますね。

 

芹沢|まったくそう! 言葉ならではのイメージの力というのが確かにありますよね。そこに言葉しかないから、逆にイメージが膨らんでいく。まったくそう思います。

[p55 12行目ー24行目]

 

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

幼少期、児童文学を読むのが大好きでした。 

 

読んだ本について記憶しているのは、言葉や物語よりもそこから得た視覚的なイメージです。現実に見た風景と混ざり合って、それらのイメージはわたしの記憶を構成しています。

 

なかでもとある物語に登場した「どんな暗闇よりも暗い湖」のイメージは特別なものです。 湖は色もなくすべての光を吸い込んでしまう。黒いのではなく、湖を見ると生まれながらの盲人になったように感じるのです。 

 

わたしは写真について考えることをライフワークとしています。 写真は見えないものも含めて見えるものです。 抜粋した文章から「どんな暗闇よりも暗い湖」の写真をつくることは可能だろうか、そんなことを考えています。



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