100の読者、100の経験[035]


辻田 美穂子

 

写真家 

2018年2月4日
2018年2月4日

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— お手紙、ありがとうございました。一気に拝読しました。そして不思議な思いにも浸っています。というのも、おそらくそれぞれの経路は微妙に違うのでしょうが、わたしもほぼ同じ地点に辿り着いていたからです。つまり、本、そして出版です。

どこからお伝えしたらいいのだろう。お手紙に触発されて、いままで忘れていたさまざまな扉が開きはじめ、ちょっと収拾がつかなくなっています。話が激しくワープしていくこと、お許しください。

[p9 1行目]

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

手紙が好きだ。メッセンジャーアプリや、メールにはない時間の流れがある。つい最近も手紙を受け取り、夢中になって「一気に」読んだ。メールなどの文章を読む際は、まず文字群を塊として認識しながら概要をつかみ、結論を確認する。そこから細かい内容に目を向けていく、という癖がある。思わず興奮してしまう内容でも、比較的一定のリズムで文字を追う。しかしそれが手紙になると、なぜか一行目からきちんと順を追って読むのだ。その時間は、最初は穏やかでも、ある行にさしかかると急速になり、時には「そう、そうだよね~!」と手紙の差出人と思いっきり握手をしたい衝動に駆られながら、「いつまでも読み続けられたらいいのに…」と、名残惜しい気持ちで結びに入る。そして読んだ後は、返答の内容を考えたり、自分の考えを整理したりしながら、どうにも瞬間的に繋がることのできない心地よい「間」の中をただよう。

 

このような静かな興奮と熱のこもった投げかけあいをしながら、本を作ることができたらどんなにいいだろう。



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