100の読者、100の経験[029]


原 亜由美

 

コーディネイター

2017年12月6日 うちの猫のピート
2017年12月6日 うちの猫のピート

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— また近々お会いできますよう。お元気で。

[p7 16行目]

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

『夏への扉』を再読し、わたしの記憶からリッキィという少女の存在がなぜか抜け落ちていることに気がつきました。猫語を解する少女は、10年後の冷凍睡眠を主人公のダンと約束します。11歳から21歳のあいだ、先に冷凍睡眠に入った恋人を思いつづけることなどできるのでしょうか。親ほど年上の恋人なんて、と、初読時10代のわたしはリッキィの存在ごと忘れたのかもしれません。

 

ところが再読で出会ったリッキィのいとおしさといったら。なによりわたしの胸を打ったのは、彼女の時間の旅の持ちもののほとんどが「本だった」ことです。触発されたわたしは夜中に押入れの発掘をしました。わたしの読書の入口から本と宇宙と旅はひとつだったと、再会した本たちが教えてくれました。

 

冷凍睡眠に旅立つダンはリッキィに「さよなら」でなくて「またあした」と告げます。港さんが芹沢さんに宛てた往信の結びがそんなふうだったので、このフレーズを選びました。



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