100の読者、100の経験[021]


小熊 千佳子

 

Artdirector/Designer

2017年7月11日 新居の本棚にて、どこに差すか思案中の図
2017年7月11日 新居の本棚にて、どこに差すか思案中の図

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— 港|人数的に言うと、核となるのは150人だと思います。

ダンバー数ってご存知でしょうか? 進化心理学者、ロビン・ダンバーによると、一人の人間が安定した関係を維持できる個体数の認知的上限は、平均150人だと言うんです。つまり、気のおけない仲間ですね。ダンバーの『人類進化の謎を解き明かす』を読むと、このサイズの仲間たちが持っている創造性がいかにすごいかがわかります。焚き火を囲む会話も、物語や芸術が生まれたのも、たぶんここから。闇雲に人を集めて目標額を達成するのではなく、賛同してくれる気のおけない仲間ができるかどうか。核となる150人で顔の見える関係がつくれたら、ファンディングは成功だと思います。

[p138 3行目ー12行目]

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

この本の副題「わたしたちの本のつくり方」。小さな出版活動を行っているため、この言葉に強く惹かれてファンディングに参加しました。待ち望まれる状況の中、一冊の本が世の中に誕生する。クラウドファンディングは、ひとつの「幸せな本の在り方」の発明なのではないかな。

 

顔の見える、手渡しに近いカタチで本を届ける、という選択をしたことで可能となったブックデザインが素晴らしかったです。通常の流通では難しい、汚れやすいと敬遠される紙白を活かした表紙(ニス引きやPP貼りなし)。傷がつきやすい金色に輝く帯。折ごとに用紙を変える仕様。

 

また奥付にも刮目。イベント関係者や動画の作成、取次、また印刷の営業、生産管理、製作ディレクション、内校検版、刷版出力、印刷、製本、品質管理…通常の奥付には記載されない過程に関わった方々の名も記されていること。

 

少部数だからこその可能性に勇気をいただきました。



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