100の読者、100の経験[017]


安岐 理加

 

美術家/てしまのまど 

2017年8月21日 てしまのまどの本棚
2017年8月21日 てしまのまどの本棚

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— 分配というのは、「配る」よりも「分ける」ほうが重要だと思うんです。一冊の本も2人で読めば二冊になるし、4人で読めば四冊になる。アナログなんだけれどデジタルというか、無限に何冊にもなっていくような考え方ですね。

[p83 7行目]

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

5年前から島で暮らしている。

 

島から街へ出かけるには船に乗り海を渡る。慌ただしい暮らしの中で船に乗るという機会は異郷へ向かうスイッチとなり、そういった時間に本を読むことにしている。といっても、景色ばかり見ていることのほうが多いのだけれど。

 

先日街の図書館で、古い漁具にまつわる資料を探していると、この家にある私の祖先が遺した道具について書き記されている頁を見つけた。資料には、身近にあるさまざまな素材を扱った作り方や、漁をおこなう時の風の向きや潮の流れなどの指南が記されていた。

 

それらの細やかな記録は、生活の糧を得る為の道具とは共有する人々との関係性を形成し、思想を伝承してゆく造形であったことを物語っていた。

 

そんなことを知り、高揚した気持ちで街から島へと渡る海の上で読んだ『言葉の宇宙船』のとある頁で、二人が本という道具について語り合っていて、私はさらに高揚し日が暮れてゆく海を眺めていた。

 

2017年夏 瀬戸内海 豊島
2017年夏 瀬戸内海 豊島


100の読者、100の経験」の詳細はこちら