100の読者、100の経験[013]


真子 みほ

 

学芸員

2017年8月4日
2017年8月4日

Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。

—————— 未知の重力圏における形態とふるまい

[p7 12行目 — 13行目]

 

Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。

 

本を最初に開いた2017年1月、この言葉を書き留めていました。文脈を掴んだのではなく、ちょうど自分の状態を示していると感じたからです。ただ今回再読してみると、「本という存在を形容する言葉」に変化していました。

 

書店や図書館、我が家の本棚の前でも、時折高所から下界を覗いた時のように内臓がスッとする感覚に襲われます。この感覚は、紙と文字の物体の中に恐ろしく広い世界があるのだ、と思い出した時に起こります。本というメディアは、それが誰にとっても直接的な情報への手引きとなる場合もあれば、同じ読者であってもその時々の状態によって言葉の意味が変化したり違うかたちでの養分となったり、有機的な動きを見せます。

 

モノとしてここに存在しているのに中身は常にかたちを変えているような、そんな「未知の重力圏」を旅するには、ここにフィットする読者の「形態」と「ふるまい」が必要なのです。そんな未知を抱えた「宇宙船」がさらなる未知へ向かう。気の遠くなる楽しさです。



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