松丸 亜希子
編集者
Q1:本書を読んで印象に残っている一文があれば教えてください。
—————— 本は言葉を運ぶ船だ。そして船である以上、船体がある。いや、精神と肉体の分かち難い関係を想えば、肉体という方がいいかもしれない。本はそれぞれの肉体を持つ。そして人同様、旅もすれば、歳も取る。
[p174 10行目 — 12行目]
Q2:その一文から感じたこと、思ったこと、考えたことを教えて下さい。
母を亡くして半年ほど過ぎたころ、『言葉の宇宙船』が我が家に到着した。慌ただしい日々の中、ファンディングに参加したことを失念していたので、思いがけない贈り物のようだった。
朗読の会を主宰していた母の遺品には、小説やエッセイなど、たくさんの本があり、いつか読もうと思いつつ、まだ読めない。いくつかの本には朗読する章のコピーが挟まっていて、「ゆっくり」「大きく」などと書き込まれている。
伴侶を失って一気に老け込んだ父にも病が見つかり、宇宙船は私と共に何度も新幹線に乗ることになった。トンネルが連なる上越新幹線は電波状況が悪く、読書にうってつけなのだ。宇宙船はいま、父の病床の傍らにある。
物質としての本は歳を取り、やがて朽ち果てるが、その魂は受け継がれる。人の肉体が土に還っても、その言葉が、その存在が、私の中にしっかりと生き続けているように。
「100の読者、100の経験」の詳細はこちら